〜始まり〜





その地は一年を通し冬という季節しかなかった。氷の神殿に雪の精霊、セルシウスがいるためだ。
冷たい吹雪が容赦なく襲いかかる中、ロイドとコレットはノイシュを連れてフラノールの街を目指していた。

本来ならエアバードという便利な乗り物があるのだが、ここ何十年来の大吹雪のためそれに乗ることすらかなわず、ただひたすら吹雪に身を打ち付けられながら山と山の間にできた野道を歩いていた。

「さみ〜なコレット。大丈夫か」

あまりの寒さにロイドは思わず身震いし、白い息を吐きながら隣にいるコレットに訪ねる。

「うん、大丈夫だよ。」
「つらかったらすぐ言えよ。どこかで休むから」

自分を気遣うロイドに元気よく答えるコレット。二人の旅はいつもこのような感じだった。

「ううん、こんなところで休んだらそれこそ遭難しちゃうよ。地図だともうすぐつくはずだからがんばろうねロイド」
「ハハハ、それもそうだ・・・・・・!?」

突然、ロイドは会話を止めた。
二人を襲う横風を少しでも遮ろうと隣で歩いていたノイシュが急に立ち止まり、長い耳を逆立てロイドの服の袖を咬んでいたからだ。
何かを伝えたがっているということに気づいたロイド達は、急いで辺りを見回す。

ゴゴゴゥッ!!!!
どこかで大きな雪の一角が崩れる音がした。

「やばい、雪崩だ。コレット急いで離れるぞ」
「う、うん」

遠くで起きた雪崩に巻き込まれないようにと、ロイド達は急いでその場を離れようとした。
しかし、そのせいで二人は頭上から大きな雪の一角が落ちてくるのに気がつかなっかった。

「コレット、上だ!」
「え?」

ロイドがそれに気づいた時、既に逃げることは不可能だった。
反射的にロイドはコレットを守ろうとその体を抱きしめる。
大量の雪が二人を襲う中、コレットが受けるはずだった衝撃をロイドは一人で受け止め続けた。

身を刺すような冷たさと衝撃が二人を埋め尽くしていく。
コレットは目の前にいるロイドに目をやった。
自分の分まで強い衝撃を受けたせいだろう。ロイドは頭から血を流し気絶していた。

『ロイドを・・・・助けないと』

コレットはそう思った。
だが体は雪に埋もれ身動きがとれないままコレットもいつの間にか意識を手放していた。



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崩れ落ちた雪が完全に二人を包んだあと、しばらくして雪からはい出したノイシュの姿があった。
ノイシュがいた場所は比較的雪が少なかったため何とか自力で這い出すことができたのだ。
体を震わせ雪を払い落とすとノイシュは自分の主を探し始める。
だが、彼一人ではロイド達を見つける事も探し出すこともできなかった。

ウオォーン ウォーーン ウォーーーーン

誰かがこの声を聞いて助けに来てくれるという奇跡を信じて・・・。
ノイシュはあらん限りの声を出して吹雪の空に向かって鳴き続けた。


その鳴き声を聞きつけたかのように、吹雪の中ノイシュの方へ向かってくる人影があった。

「もう大丈夫よ、ノイシュ」

女性はノイシュに近づき頭を撫でてやると、ニコリと優しく微笑んだ。




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